バァで値段を聞く。
■ ことにしている。
初めての場所で、ショット売りの店ならそのようにしている。
カクテルの値段を尋ねるのは失礼なような気がするので、ウイスキイやジンの銘柄指定で相場を決めている。
先日は、四角いジンが七百円だった。
安いのだと思う。
隣に同年輩の車屋が座り、その向こうは若い男だった。
若いのは、ヨンサンマルのゼットに乗っているというから、いわゆるハマのタイプである。
「峠を降りてくると、ローターが真っ赤になるんすよ」
バーテンはと言えば、ウレタン付きのミジェットで昨日事故ったという。
「カウンターが間に合わなくて」
「なんてね」
彼等の飲んでいるバーボンは、聞いたことのない銘柄だった。
風土のようなものも、あるのかも知れない。
雨だけれども。